2021-11-17
30代の女性患者様は、汎発性脱毛で、IGF-1を増やす治療で産毛も増えてきました。新型コロナウイルス感染予防のためのワクチン接種1回目で、翌日にのみ蕁麻疹が出ました。しかし、2回目ワクチン摂取の1ヵ月後から、蕁麻疹が広い範囲で毎日出るようになり、かゆみで不眠になるほどでした。他の多くの患者さんでは、ワクチンの副作用は、軽く済んでいるのですが、この患者様の場合は、重症でした。不眠になるほどの重症では、体力を消耗するので、このような時には、ステロイドの出番です。プレドニンを1回10mgで、朝晩に飲んでもらうと蕁麻疹は治まり、1日10mgの服用でも、眠れるようになりました。蕁麻疹では、アレルギーの原因(おそらく、この場合は、ワクチンのせいで体に発現したウイルスのスパイクたんぱく質)により、肥満細胞という細胞から、ヒスタミンが放出され、これが知覚神経を刺激して、かゆみが出ます。しかし、同時にIGF-1も増えます。ということは、蕁麻疹では、IGF-1が増えるので(この反応自体は、アレルギーを改善するための治癒力)、育毛効果も出てくるはずです。予想通り、蕁麻疹が出て1.5ヵ月後(ワクチン接種から3ヵ月後)には、ワクチン接種3ヵ月前に比べて、前頭部に産毛が増えてきました(写真)。勿論、かゆみはつらい症状なのですが、それをかゆみ止めなどで、過剰に止めてしまうと、IGF-1が減少して、脱毛などの副作用が出ます。しかし、IGF-1を減らさない少量のステロイドでは、穏やかに蕁麻疹が改善し、産毛が生えてきます。勿論、ステロイド投与は、根治させる治療ではない対症療法なので、症状が改善すれば、速やかに減量中止する必要があります。ステロイドは、このように急場をしのぐ治療には必要ですが、その副作用から考えると、だらだらと使う薬ではありません。このように、かゆみが出ている時には、IGF-1が増えて、治癒力が上がっているので、皮膚科で処方されるかゆみ止めは、治癒力を押しつぶすことになり、脱毛も起こします。これまでに、新型コロナ感染やインフルエンザ感染で、かえって脱毛症が改善した患者さんもいましたが、知覚神経を敏感にしておくと、このように一病息災が実現します。